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要約版 特許庁産業財産権制度問題調査研究について | 経済産業省 特許庁

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(1)

産業財産権制度問題調査研究

特許権侵害における

損害賠償額の適正な評価に向けて

平成29年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究

(2)

産業財産権制度問題調査研究

 産業財産権制度に関しての企画立案に資するように、法制面や運用面について改正を行う 際の基礎資料となる報告書を取りまとめることが目的。

 調査研究テーマ毎に専門家を交えた研究委員会の開催・国内外公開情報調査・国内外ヒア リング調査・国内外アンケート調査等、調査研究テーマに応じた調査・分析を行う。

特 許 庁

産業財産権制度に関する

多種多様なニーズ 国際的な制度調和

関係者(産、学、官)及び有識者 (弁護士、弁理士等)による調査 研究委員会にて検討

調査研究報告書の 取りまとめ

委員会の検討結果や研究報告書等を制度改正 の検討に活用

国内外ヒアリング

調査 国内外公開情報調査

国内外アンケート

調査 各国の制度調査

<調査イメージ>

産業財産権制度問題調査研究について

<詳細について>

本調査の詳細については、特許庁HP(以下 URL記載)に掲載しております。平成29年度

研究テーマ一覧をご参照ください。

URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/toush in/chousa/zaisanken.htm

<お問い合わせ先>

経済産業省 特許庁 総務部 企画調査課 〒100-8915 東京都千代田区霞が関3-4-3 TEL:03-3581-1101(内2156)

FAX:03-3580-5741

(3)

産業財産権制度問題調査研究

■国内ヒアリング調査

対象:我が国及び海外において特許訴訟 における損害立証の経験を有する各業界 の主要企業

3

調査の俯瞰図

背景

特許権の活用によるイノベーション創出に向け、ビジネスの実態やニーズに即した権利者及 び侵害者双方に納得感のある適切な損害賠償額を実現することが必要といえる。

そして、合理的で納得感のある損害額の認定のためには、特許訴訟の紛争当事者が合理的な 損害算定の証拠を用意する必要といえる。

まとめ

本報告書は、特許訴訟における損害賠償額の算定手法やその際の各考慮要素等について、我 が国の実情や米国を中心とした海外での考え方も取り入れつつ取りまとめたものである。本 報告書が広く参照されることで、各紛争当事者が合理的な損害賠償額を主張立証することが 可能となり、納得感のある適正な損害賠償額が実現されることが期待される。

■委員会

委員長:末吉 亙 (潮見坂綜合法 律事務所 弁護士)

委員:6名

■海外質問票調査

対象:海外主要国(米国、ドイツ、英国、 中国及び韓国)における特許訴訟の制度 や実務に係る論点のうち、損害立証に係 る論点について、各国の知的財産を専門 とする弁護士

■国内外公開情報調査 目的

(4)

産業財産権制度問題調査研究

目次

Ⅰ.序

Ⅱ.基本的な損害理論

Ⅲ.逸失利益

Ⅳ.実施料相当

Ⅴ.損害算定の専門家

(5)

産業財産権制度問題調査研究 I.序

1.背景・目的

5

 特許権の活用によるイノベーション創出に向け、ビジネスの実態や

ニーズに即した権利者及び侵害者双方に納得感のある適切な損害賠 償を実現することが必要といえる。

 我が国においては推定規定によって一定の算定が可能であるものの、

合理的な損害算定のための考え方や方法論について十分な指針が得 られていないとの実情もあるといえる。

 そして、合理的で納得感のある損害額の認定のためには、特許訴訟

の紛争当事者が合理的な損害算定の証拠を用意する必要がある。

 よって、法と経済学の観点を含む見地から、特許訴訟における損害

(6)

産業財産権制度問題調査研究

中位値

(百万円) 判決数

240.8 298 54.8 4 23.8 111 19.6 20 6.0 101 0.7 7744 7,266 45 6 30 34 313 14 1 10 14 139 27 6 32 2 42 16 10 2 12 2 28 4 5 5 20 52 4 4 28 2 3 100

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

中国 韓国 ドイツ 日本 英国 米国

1-500万円未満 500-1,000万円未満 1,000-5,000万円未満 5,000万円-1億円未満

1 -5 5 -10 10

-認容額による判例数の割合

I.序

1.背景・目的

※米国においては陪審制度によって高額の認容額が認められる場合があるなど、 厳密な比較が困難な側面もある。

 統計では、日本での裁判所が認定する損害の認容額の水準は、

(7)

産業財産権制度問題調査研究

 公開情報調査

• 損害賠償額の合理的な算定のために考慮すべき検討要素として、法と経済学の

観点を含む見地から、日本及び諸外国の裁判例や制度、訴訟外のライセンス交 渉時に検討される考え方等について調査を行った。

 国内ヒアリング調査

• 我が国及び海外において特許訴訟における損害立証の経験を有する各業界の主

要企業に対し、損害立証に係る経験や、現実の交渉におけるライセンス料率に 関する考え方についてヒアリングを実施した。

 海外質問調査

• 海外主要国(米国、ドイツ、英国、中国及び韓国)における特許訴訟の制度や

実務に係る論点のうち、損害立証に係る論点について、各国の知的財産を専門 とする弁護士に対して質問調査を実施した。

 委員会による検討

• 専門的な見地から詳細な検討を行うために、学識経験者、産業界有識者、弁護

士及び弁理士7名からなる委員会を3回開催した。

7

I.序

(8)

産業財産権制度問題調査研究

損害 = 不法行為がなかった場合の仮想的な利益状態

-不法行為により不利益を被った現実の利益状態

(参考)米国特許法第284条

損害額は侵害の補償するに十分な額でなくてはならず、その賠償額は少なくとも合理 的実施料、及び裁判所が認める金利や費用の合計額を上回るものでなければならない

逸失利益 第1項 損害=侵害者の譲渡数量×特許権者の単位当

たりの利益

第2項 損害=侵害者が侵害行為により得た利益

実施料相当 第3項 損害=実施料相当

Ⅱ.基本的な損害理論

1.民法第709条と差額説

(9)

産業財産権制度問題調査研究

 日本では、訴訟法上当然には敗訴者負担は認められず、相当因果関係

があるものとして、弁護士費用についての損害賠償が認められるのは

一般に損害認容額の約1割といわれる。

 実際の弁護士費用等が上記を超える場合には、実質的に損害が填補さ

ない。

 特に、認容額に含まれ得る額と実際の費用額とが大きくかけ離れた場

合には好ましくないといえる。

9

3.弁護士費用等の損害賠償

(10)

産業財産権制度問題調査研究

 侵害の有無による市場の変化

基本的な考え方及び経済モデル

• 侵害がなかった場合、

市場における競争が低 下するため、特許権者 の価格引き上げのイン センティブが高まる。

• よって、逸失利益の額

の算定では、販売数量 の低下だけでなく、価 格低下による影響を考 慮する必要がある

 特許権侵害による損害

損害(逸失利益)=(P”-P)×Q+(P”-MC)×(Q”-Q)

Ⅲ.逸失利益

1.逸失利益の考え方

(11)

産業財産権制度問題調査研究

11

Ⅲ.逸失利益

2.算定プロセスの概要

特許法第102条第1項又は第2項以外の手法(例) 市場の状況やコスト構造が変化しない前提がある場合

分析に必要なデータが入手可能で、計量経済学のスキルを有する専門家の関与が可能な場合

特許法第102条第1項又は第2項に基づく手法(例)

「侵害者の販売数量」×「特許権者又は侵害者の単位あたり利益」

①侵害売上げを基礎とする方法

「侵害者の販売数量」 ×「特許権者又は侵害者の単位あたり利益」

× 特許権者のシェア

特許権者のシェア+非侵害競合のシェア

②市場シェア法

「侵害者の販売数量」× 「特許権者又は侵害者の単位あたり利益」

×「侵害品がなかった場合、権利品を選択する割合(調査結果)」

③顧客アンケート調査法

非侵害の競合が存在、各製品が同質である場合

科学的なサンプリング手法が適用可能な場合

※特許権者の実施能力を超える部分や「販売することができない事情」(②③にて各前提を満たす場合には控除可能)の控除が必要

「侵害期間の販売数量」 ×「(侵害前の価格-侵害後の価格)」

④前後法

事情に応じて経済モデルを構築して推定

⑤計量経済学的手法

(12)

産業財産権制度問題調査研究

(算定式(例))

特許法第

102

条第

1

項又は第

2

項による算定

Ⅲ.逸失利益

3.算定の枠組み

(留意事項)

侵害者の販売数量 × 権利者又は侵害者の単位あたり利益

侵害者の売上げを基礎とする方法

 非侵害競合が存在しないなど多くの前提が必要。

 必要に応じて、特許権者の実施能力を超える部分や「販売すること

(13)

産業財産権制度問題調査研究

13

特許法第

102

条第

1

項又は第

2

項による算定

特許権者が、適切に確定された市 場のシェアに比例して、権利侵害 品の売上げ一部を達成していたと 仮定する方法

(留意事項)

前提条件として、市場における権 利品、侵害品、非侵害の競合品が ほぼ同質であり、侵害の有無に よって市場全体の供給量や価格が 変化しないこと

関連判例:State Industries v. Mor-Flo Industries

非競合の代替品との間のシェアに比例する部分に基づいて、Mor-Flo社の売上の40%に

係る限界利益をState社の逸失利益として認めた。

Ⅲ.逸失利益

3.算定の枠組み

市場シェア法

「侵害者の販売数量」 ×「特許権者又は侵害者の単位あたり利益」

× 特許権者のシェア

特許権者のシェア+非侵害競合のシェア

(算定式(例))

(14)

産業財産権制度問題調査研究

特許法第

102

条第

1

項又は第

2

項による算定

Ⅲ.逸失利益

3.算定の枠組み

顧客アンケート調査法

「侵害者の販売数量」× 「特許権者又は侵害者の単位あたり利益」

×「侵害品がなかった場合、権利品を選択する割合(調査結果)」

(算定式(例))

(留意事項)

科学的サンプリング手法に基づき、現実の購入行動が反映されるような質問設計を行 う必要がある。

(15)

産業財産権制度問題調査研究

権利侵害が発生する前後 で、権利者の売上や価格、 利益がどう変化したかを 比較分析する方法。

15

特許法第

102

条第

1

項又は第

2

項以外の算定方法

逸失利益=((侵害前の価格)-(侵害後の価格))×侵害期間の販売数量 関連判例:オキサロール事件

裁判所は、後発薬である被告製品が薬価収載されたことにより、原告製品の薬価が下落 し、その取引価格が低下したことによる損害を認めた。

Ⅲ.逸失利益

3.算定の枠組み

(算定式(例))

(16)

産業財産権制度問題調査研究

特許法第

102

条第

1

項又は第

2

項以外の算定方法

計量経済学的手法

(留意事項)

他の手法と比べデータ要件が厳しく、また、計量経済学の専門スキルが必要。

線形モデルのイメージ

Ⅲ.逸失利益

3.算定の枠組み

侵害がなかった場合の市場におけ る特許権者の製品の需要曲線を、 需要の自己価格弾力性と製品間の 需要の交差弾力性を考慮した計量 経済学的モデルにより直接求める 方法。

(17)

産業財産権制度問題調査研究

17

市場における代替関係

Ⅲ.逸失利益

4.算定における考慮要素

 権利品と侵害品との間に需要者にとっての代替関係がなければ、たと

え権利侵害の事実があったとしても、権利侵害によって権利者の利益 が失われたとはいえない。

 特許法第102条第1項のただし書は、譲渡数量の全部又は一部に相

当する数量を特許権者が「販売することができないとする事情」に相 当する数量に応じた金額の控除を求めている。

 権利品と侵害品との代替関係が十分でない場合、控除要因となりうる。

 権利品と侵害品との代替関係を検討する際考慮すべき要素の例として

下記がある。

(18)

産業財産権制度問題調査研究

市場における代替関係

関連判例:Akamai Technologies v. Limelight Networks

Akamai社の専門家が交差弾力性の分析に基づく主張を行い、裁判所は、経済原理に

基づいているとしてこれを認めた。

数量 AX BX CX

格 AX -1.8 1.0 1.2

BX 1.0 -2.1 0.7

CX 1.2 0.7 -1.9

(交差弾力性の例)

(権利品)(侵害品)(非侵害)

 交差弾力性

権利品、侵害品及び非侵害品との代替関 係の程度を計測する経済学的指標として、 交差弾力性がある

 非侵害の競合の存在

侵害品を購入した顧客の一部は、仮に侵 害がなかった場合、非侵害の代替品を購 入していたと通常考えられる

(19)

産業財産権制度問題調査研究

19

特許権者の能力

 侵害がなかった場合、自社生産能力の拡大が可能であったか否か

もし特許権侵害がなかった場合には、特許権者は実際よりも多くの 売上を実現できていたと主張するためには、売り上げの増加分に対 応する生産能力に十分な余裕があったこと、または新たに生産能力 を拡大させる能力があったことを明らかにする必要がある。

 能力の考慮要素例

• 生産設備

• 増産

• 流通

• 営業体制

• 必要な費用の資金調達の実現可能性

(20)

産業財産権制度問題調査研究

 対象特許を直接使用していないが、関連する部分について請求可能な類

• 完成品中に特許を使用する機能及び使用しない部分がある

• 特許製品と密接に関連する特許製品のセット販売

• 特許製品に係る派生製品(修理部分、スペアパーツ等)

特許発明を実施していない部分に係る損害

(21)

産業財産権制度問題調査研究

 ①対象製品の一部分のみが権利者の権利に係るものである場合や、②対

象製品に係る利益のうち特許権以外の要因が寄与する部分がある場合に 寄与率が考慮され得る。

 米国においては、売上げへの貢献要素として、特許に係る要素と特許以

外の要素が存在する場合であっても、実施品の需要が存在し、かつ、非 侵害代替品がない場合には切り分け(寄与率の概念に相当)による調整 は不要、と判示された(Mentor Graphics Corp. v. EVE-USA,Inc.事件

の連邦巡回裁判所判決)。

 逸失利益の額の推定は特許発明の価値と因果関係のある不当利得の額を

問題としているのではないから、寄与率を特許法第102条第1項及び第2

項の推定中で反映させることは不適切とする学説もある。

 特許法第102条第1項及び2項における販売数量等に関する減額プロセス

の根拠理由と、寄与率の根拠理由とが同様である場合には、同じ事情で の二重減額となるとの指摘もある。

21

寄与率

(22)

産業財産権制度問題調査研究

特許法第102条の

損害推定

特許権者の実施能力

範囲内の部分 範囲外の部分 第1項又は第2項 ①請求可能 ②請求困難

第3項 ③請求可能 ④請求可能

基本的な考え方

 侵害がなければ権利者は(自社実施が不可能な場合でも)少なくと

も侵害者から合理的な実施料を得ていたであろうという想定が基礎 となっている。

①+③:重畳適用困難 ①+④:重畳適用可能

Ⅳ.実施料相当

1.実施料相当の考え方

 侵害者が権利者の実施能力では参入できない範囲(市場や販売能

力)で事業を行う場合、異なる損害をそれぞれの手法で推定するこ ととなり、経済合理性がある。

(23)

産業財産権制度問題調査研究

23

対象特許(技 術)が完成品 の需要を喚起 したといえる

か?

対象特許(技 術)を含む最 小販売単位が 特定可能か?

対象特許(特 許)が同単位の 需要を喚起した といえるか?

対象特許(技 術)を含む部 品等の価値が 推定可能か?

完成品価格

Yes

Yes Yes

No

No

部品等の価値 最小販売単位

の価格

その他の方法

No Yes No

①仮想的交渉のレン ジを推定する方法 (各種要素を考慮し

て料率を決定)

②比較可能取引を参 照する方法 (各種要素を考慮し て類似度を判断して

決定)

ロイヤルティベースの推定 料率の推定

交渉レンジ上限・下限に必要 なデータ等が入手可能な場合

など

OR

比較対象となり得る取引が存 在する場合(当事者の過去の ライセンス契約、第三者間契 約、業界平均等)など

実施料(金額自体)の推定

販売単位当たりの実施料の推定(上記料率の推定と同様のプロセス)、(コストアプローチが適用可能な場合がある)

<考慮要素(例)>

• ライセンス条件・

方針・期間

• 対象特許の製品の

特性

• ビジネス上の関係 • 収益性

• 市場での状況・需

• 代替品に対する優

位性

• 費用節減効果 • 使用頻度

Ⅳ.実施料相当

2.算定プロセスの概要

(24)

産業財産権制度問題調査研究

ジョージア・パシフィック・ファクター

1.対象特許の権利者が過去に受け取った実施料

2.対象特許と比較可能である特許に支払われた料率

3.ライセンスの内容と範囲

4.ライセンサーの確立されたライセンス方針

5.ライセンサーとライセンシーのビジネス上の関係

6.特許製品以外のライセンシー製品の販売への影響

7.特許残存期間とライセンス許諾期間

8.特許を組み込んだ製品の収益性、商業的成功の度合い、現在の市場での需要

9.旧式品と比べた特許製品の優位性や効用

10.権利者のビジネス上の特許実施形態と特許使用者が得た利益

11.権利侵害者による特許の使用頻度と使用利益

12.商慣習上の、特許発明の使用に対する売上や利益の割当比率

13.特許発明以外の要素、製造方法、事業リスク、あるいは侵害者が付加した機能や改善等ではな

く、純粋に特許発明の寄与により実現されたといえる利益部分

14.適切な専門家による意見、証言

15.権利者と侵害者が合理的かつ自発的にライセンス契約に達するべく交渉したと想定した場合の

ロイヤルティ

Ⅳ.実施料相当

2.算定プロセスの概要

 米国において、合理的実施料を決定する際の考慮要素として、下記

(25)

産業財産権制度問題調査研究

ロイヤルティベースの推定

25

関連判例:Cornell Univ. v. Hewlett-Packard Co.

Cornellの専門家は、Hewlett-Packardのサーバー・ワークステーション全体の販売価格

をロイヤルティベースとして主張したが、裁判所は、特許が消費者の需要と結び付けら れる根拠がないとしてこれを退け、最終的に、プロセッサーの販売価格をロイヤルティ ベースとして認めた。

Ⅳ.実施料相当

3.算定の枠組み

 特許権の侵害があったとしても、その特許が完成品の一部のみに使

用されている場合は、その部品の価格をロイヤルティベースとする 方法(最小市場単位法)が合理的といえる。

 完成品の価格をロイヤルティベースとする方法(全体市場価値法)

(26)

産業財産権制度問題調査研究

仮想的交渉のレンジを推定する方法

• 仮想的交渉とは、特許権者と侵害者との間で、対象特許についてライセンス

交渉が行われていた場合、どのような交渉となっていたか想定すること。

• 米国では、仮想的交渉の枠組みを経済学的な観点から確認する手法として、

近年、ナッシュ・バーゲニング法(NBS)が採用される事例がある。

Ⅳ.実施料相当

3.算定の枠組み

(27)

産業財産権制度問題調査研究

27

比較可能取引を参照する方法

• 対象特許と同一又は類似する技術の第三者へのライセンスの実施料 • 第三者間で合意された、その他の比較可能な特許の実施料

(留意点)

業界の平均的実施料率を参照する場合は、特許の価値の分布には偏りが大きいた め、一般的な特許の価値を過大評価し、ブロックバスター特許の価値を過小評価 することになる。

特許価値の分布の例

平均

Ⅳ.実施料相当

3.算定の枠組み

(28)

産業財産権制度問題調査研究

関連判例:Apple Inc. v. Motorola Inc.

Apple社側専門家は、Motorola社が侵害した特許を代替する技術を導入するための費用を

基礎とする損害を主張したが、裁判所は、Apple社が当該特許を代替する技術や価格、代

替手法を具体的に明示していないこと等からこれを退けた(ただし、コストアプローチが 実施料相当の算定にも適用可能であることが示唆された)。

コストアプローチ

技術回避(デザインアラウン ド)の費用を特許の価値とする 方法。

(留意点)

実際に回避が可能であったこと、 および回避に係る費用の立証が 必要。

(29)

産業財産権制度問題調査研究

「通常」のライセンス契約での実施料と特許訴訟での実施

料相当

• 一般的な(訴訟外の)ライセンス契約では、対象特許の無効化リスクや第三者侵

害リスクが存在するため、実施料はそれらのリスクが割り引かれたものとなる。

• 他方、訴訟時点においては、すでに権利の有効性や侵害の事実があるため、一般

的な(訴訟外の)ライセンス契約における実施料よりも高く算定することには、 合理性があるといえる。

29

(30)

産業財産権制度問題調査研究

寄与率

(コンジョイント分析)

例えば、ノート型パソコンについて、重要な属性が重量、HDDの容量、バッテリーの

持ち時間、メモリーであり、各属性について、それぞれ3つの水準があったとする (重量であれば、3㎏/1.5㎏/1㎏など)。この場合、消費者が選択できる組み合わ

せは、243通り(3の5乗)ある。243通りの組み合わせから、全体を適切に表すバラ

ンスのよい組み合わせに絞り込み、各組み合わせについて消費者アンケートで満足度 を評価し、結果を計量経済学的手法を用いてどの属性が消費者の満足に影響を与える のかを分析する。

Ⅳ.実施料相当

4.算定における考慮要素

 対象特許以外に価値貢献要因が存在する場合、対象特許が製品の価

値に貢献する割合を適切に反映させるとの考え方である。

 ロイヤルティベースが販売可能な最小特許実施単位である場合、料

率の算定過程で既に寄与率の概念が考慮されており、さらに寄与率 を乗じることで二重に寄与率が考慮されることになり、算定される 実施料相当が過少なものとなる。

(31)

産業財産権制度問題調査研究

31

米国における専門家の活用

 特に事案が複雑な場合等においては、専門家を活用することでより

適切な損害賠償額の実現につながる。

 米国では、当事者から依頼を受けた損害算定の専門家(damage

expert)が、中立的立場から損害額やこれに係る因果関係について

法廷において証言を行うことが多い。

Ⅴ.損害算定の専門家

我が国における専門家の活用

 より適切な損害額算定のため、我が国でも損害算定の専門家の利用

が促進されるべきである。

 日本では計算鑑定人制度(特105条の2)があるが、この制度は計

(32)

産業財産権制度問題調査研究

専門家の業務

①損害の因果関係を含む事実関係の調査と分析、 ②損害ロジック及びモデルの構築に基づく損害算定 ③損害算定に係るコンサルティング

④法廷における証言及び専門家意見書の作成

Ⅴ.損害算定の専門家

専門家に求められる能力と資格

①経済学、②会計、③財務分析及びファイナンス、

④データ処理及び統計学、⑤業界の専門性、⑥コミュニケーション能力

専門家に求められる能力と資格

 専門家の証言や意見書は、裁判において証拠として採用される可能

性を前提としたものであり、独立的立場からの客観的な意見である ことが求められる。各専門家は倫理的な基準を内部に持つことが重 要といえる。

 主に以下のように整理される

(33)

産業財産権制度問題調査研究

Ⅵ.総合分析

 逸失利益の額の算定において、侵害売上を基礎とする方法では、権

利品と侵害品が完全に代替可能であり、非侵害の競合が存在しない ことなどの前提が成立する必要があるが、そのような前提が成立し ない場合には、市場シェア法や顧客アンケート調査法が有用な場合 がある。

 実施料相当の額の算定の際に、我が国では業界平均料率や第三者と

のライセンス契約等の比較可能な取引を参照する方法が一般的であ るが、比較可能性の面で重要な問題がある場合には、米国で広く利 用されている仮想的交渉のレンジを推定する方法を検討する価値が ある。

 訴訟外の一般的なライセンス契約での額と、特許訴訟での実施料相

当の算定額とは、特許権の無効化リスクや第三者侵害リスクの有無 や、契約時期が遅れた場合や係争関係での和解した場合には契約額 が高額となることが多いとの実情を考慮すると、特許訴訟での実施 料相当の算定額の方が高額とすべきケースも多いと考えられる。そ の場合には、各当事者は上記リスクに係る調整を加味して主張する

(34)

産業財産権制度問題調査研究

Ⅵ.総合分析

 逸失利益と実施料相当が同時に損害額として認容されることについ

ては、米国では認められるケースが多い。また、我が国について見 ても、各判決の事情や経済合理性を考慮すると、逸失利益の減額事 由が特許権者の販売個数能力や生産能力であった場合等、個別の事 情によっては合理性があるといえる。

 寄与率については、客観性を高める手法として、我が国においても

コンジョイント分析などの方法が利用可能といえ、また、逸失利益 の算定において寄与率により減額される際には、場合によっては同 じ事情により二重減額となり得る点には留意が必要といえる。

 米国においては、損害算定の専門家が、会計的側面に加えて、損害

(35)

産業財産権制度問題調査研究

禁 無 断 転 載

平成29年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究

特許権侵害における損害賠償額の適正な評価に向けて(要約版) 平成30年3月

請負先

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3丁目3-1

新東京ビル

※本報告書における意見の部分は、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社の意見 を代表するものでない。

編 特許庁「特許権侵害における損害賠償額の適正な評価WG」 デロイト トーマツ ファイナンシャル アドバイザリー合同会社

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特許庁 審査業務部 審査業務課 方式審査室

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